仙台地方裁判所 昭和25年(モ)34号 判決
当裁判所昭和二十五年(ヨ)第一五号不動産仮処分申請事件について、昭和二十五年二月二十七日当裁判所が爲した仮処分決定は、申立人において金十万円の保証を立てることを條件として、之を取消す。
申立費用は被申立人の負担とする。
此の判決は仮に執行することができる。
二、事 実
申立代理人は、当裁判所昭和二十五年(ヨ)第一五号不動産仮処分事件について、昭和二十五年二月二十七日当裁判所が爲した仮処分決定を取消す、との判決を求め、その理由として、申立人は、被申立人の申請による主文第一項掲記の仮処分事件において、仙台市東四番丁十八番宅地五百十三坪六合七勺の換地として指定された、仙台市特別区劃整理地区第十四ブロツク第二十二号の一部、百三十一坪四勺(別紙図面省略(イ)(ロ)(ハ)(ニ)の範囲)、の土地に対し建築其の他の設備をしてはならない、という仮処分決定を受けた。
しかしながら、申立人は右十八番宅地の内二百十六坪上に別紙目録<省略>記載の建物四棟を所有し、訴外鈴木啓文、幸野和泉、日本商運株式会社仙台出張所、日本セメント株式会社仙台出張所、大條豊等が之を住居又は事務所として使用しているのに、右十八番の宅地は今次仙台市の特別都市計劃の区劃整理により訴外高村某の所有地の換地予定地に指定され、申立人は、昭和二十四年十二月二十七日、仙台市長から、特別都市計劃法第十五條により、右建物の移轉命令を受けた。その期日は昭和二十五年三月二十六日である。而して、申立人は、換地予定地として指定された前記十四ブロツク第二十二号の土地を他にしては、前記建物の移轉先がないから、このまゝにしておいて將來行政代執行法に基き代執行を受け、前記家屋が全部取壞されることになると、申立人は回復することができない損失を被るに至るであろう。以上は、民事訴訟法第七百五十九條の「特別事情」に該当するから本件仮処分の取消を求める爲本件申立に及ぶ、と述べた。<立証省略>
被申立代理人は、申立却下の判決を求め、答弁として、申立人が被申立人の申請により、申立人主張の仮処分決定を受けたこと、申立人がその主張の宅地上に、その主張の建物四棟を所有すること、右宅地が訴外高村某の所有地の換地予定地に指定されたこと、本件仮処分の目的となつた土地は申立人主張の十八番宅地の換地予定地に指定された土地であることは認める。しかしながら、右宅地上の建物の使用状況、申立人が仙台市長から移轉命令を受けたことは何れも知らない、と述べた。<立証省略>
三、理 由
被申立人の申請により、申立人主張の仮処分決定が爲されたこと、申立人が仙台市東四番丁十八番宅地五百十三坪六合七勺中二百十六坪の地上に、その主張の建物四棟を所有することは当事者間に爭がなく、証人鈴木淳一郎の証言により成立を認める甲第四号証及び同証人の証言によれば、右四棟の建物は現に訴外日本商運株式会社南町支店、日本セメント株式会社仙台出張所、西大條里子、ライト社牛乳配給店主鈴木淳一郎等がその住居又は事務所として之を使用している、ことの疏明がある。
それにも拘らず、右十八番宅地が仙台市特別都市計劃の区劃整理により訴外高村某の所有地の換地予定地に指定され、右十八番宅地の換地予定地として、仙台市特別区劃整理地区第十四ブロツク第二十二号の一部、百三十一坪四勺(本件仮処分の目的となつた土地)が指定された、ことは何れも当事者間に爭がなく、成立に爭がない甲第二号証によれば、申立人は、昭和二十四年十二月二十七日、仙台市長から、昭和二十五年三月二十六日を期限とする右建物の移轉命令を受けたことの疏明がある。
よつて、申立人が、右移轉命令に應じて、前記建物を他に移轉しようとしても、仙台市内は宅地の入手が困難であるから、右換地予定地を他にしては、容易にその移轉先を得ることができない、ことが明かである。從つて本件仮処分をそのまゝにしておいて、早晩、申立人が行政代執行法に基く代執行を受けることになつたとすれば申立人は、移轉先がないことのために、著しい損害を被ることは明かである。これに反し、被申立人は仮に、本件仮処分が取消され前記建物四棟が本件換地上に移轉されることになつたとしても、換地前の状態に復するに過ぎないから、これによつて、被申立人の被る不利益は、本件仮処分が取消されないことによつて申立人が被る損害に比較すれば、殆ど、顧みるに足りないものであるといわなければならない。
以上のような事実の存在は、民事訴訟法第七百五十九條の特別事情に該当する、と認めるべきであるから、申立人に金十万円の保証を立てしめて、本件仮処分を取消すのが相当である。
よつて、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九條、仮執行の宣言につき同法第百九十六條第一項を適用して主文の通り判決する次第である。
(裁判官 松尾巖 伊藤正彦 片桐英才)